エステー初の介護向けブランド「エールズ®」は、商品開発チームの担当メンバーがいちから市場調査を重ね、コンセプトを練り、1年以上かけてようやく5月に商品化されました。商品開発を通してメンバーが目の当たりにしたのは、意外とも言える在宅介護の現実。空気に真剣な5人(エステーのスローガンは「空気をかえよう」なんです!)のインタビューをお届けします(全2回)。
※2017年10月19日のエステーHP「空気チャンネル」の転載記事です。

実は根深い
在宅介護の「ニオイ」問題

開発にあたっては、メンバーが在宅介護の現場でニオイをかいで分析し、生活者の声を丁寧に拾いました。まずは、エステーの専門領域であるニオイの課題を聞きました。

当時のプロジェクトメンバー(写真右から)
岡部豊(ビジネス開発事業部・事業部長) 
松村貴史(商品開発グループ)
大高康佑(商品開発グループ) 
田澤寿明(研究グループ)
高岳留美(研究グループ・リーダー)

[編集部]在宅介護のニオイは、家庭の中でどれほどの問題になっているのでしょうか? 大高さんは、ご自身で介護の経験があるそうですね。

[大高]学生時代に仙台の実家で、要介護4の祖母と同居していました。ポータブルトイレの処理を、よく私がやっていました。在宅介護でニオイの問題が大きいことは、実感していましたね。

[岡部]介護者に実施したアンケート調査では、「在宅介護における困りごと」で「介護時のニオイ」が4位になりました。特に、義父母を介護されている場合、38.4%の方がニオイを困りごとに挙げています。食事の用意や自身の身体への負担を上回り2位になるんです。

一方で、ニオイは人によって感じ方が違うし、「自分さえ我慢すれば」と、介護者が不満を訴えづらいのも現実。ケアマネージャーさんやヘルパーさんも、指摘できないところのようです。
みんなが困っているけど、問題にするのはある意味タブー。実は、根が深い問題なんです。

事業部長としてチームを引っ張った岡部

[松村]しかも、何のニオイに困っているかご本人もわからない。聞いてみると、「介護臭」「老人臭」「何とも言えないニオイ」といった感覚的であいまいなワードが多かったですね。

商品を手に取り、当時を振り返る松村

[高岳]はじめは、お部屋に上がって調べても、何のニオイかわかりませんでした。体臭や尿など、これといった原因が、研究者の私たちにもわからなかったんです。
そこで開発の担当者はユーザーへのインタビューやアンケートを、研究の担当者は既存の研究を調査するなど、別々にアプローチしました。最終的に仮説をたてて、みんなで在宅介護の現場を調査。
それでわかったのが「しみつき臭」でした。たとえば、尿が出たばかりのニオイと、シーツなどにしみついて時間がたったニオイでは、成分も対策も違うんです。
当時、当社でも扱った経験のないニオイだったので、再現するのが大変でした(※消臭剤の開発には、まず対象となるニオイを再現して、消臭方法や効果を実験で検証する)。

研究の苦労を振り返る高岳と田澤

[岡部]確かに、既存の家庭用消臭剤は在宅介護での満足度が低く、特有のニオイにうまく対策できていなかったと思います。
できたばかりの「エールズ®」を、社員の知り合いで在宅介護をしている方に使ってもらいました。とても喜んでくださり、「介護している部屋に家族が集まるようになった」とまで。
改めてニオイ問題の大きさを感じ、「人生を背負う仕事なんだ」と思い知らされました。

後編の記事はこちらをご覧ください。

「空気に真剣な5人があらためて考えた「在宅介護」とニオイの問題(後編)」へ。